中小零細企業における「財務」の役割

前回は「経理」と「財務」の違いについてお話しをさせて頂きました。今回は中小零細企業における「財務」についてもう少し考えてみます。

 

中小零細企業における財務の役割とは何でしょうか。今は昔ですが、大企業では財務も運用で稼げという時代がありました。しかし、中小零細企業おいては昔から資金(現金)を切らさないようにすることが、財務の最大の役割と考えます。黒字にもかかわらず、資金が枯渇して倒産する企業があります。財務をおろそかにしてしまった結果かもしれません。逆に赤字なのに存続している企業もあります。財務がしっかりしているのかもしれません。

 

自覚症状の無い病気を早期に発見するという点において、財務は人間ドックと同じような役割を果たします。売上が急拡大している企業は強気になります。自分が急性資金不足という病気にかかっているなど夢にも思いませんので、もっと売上を伸ばそうとさらに営業を走らせます。そして、ある日突然資金が足りなくなっている事に気がつきます。

 

「売上を急激に伸ばしすぎる危険」という病気を早期に発見できていれば防ぐことができた倒産です。

 

発見した病気に対して、迅速で的確な処置を施すことも大切です。赤字で出血がひどければ、即効性のある経費削減で止血(応急処置)を行ったり、病気に侵された資産があれば、切り取るための手術を施したりと早い段階で対処した方がより効果的です。痛みが無いからと言って手術を先延ばしにしていると、取り返しのつかないことになります。

 

幸い目立った病気が発見されなくても、業歴が長くなれば着実に老化は進んでいきます。老廃物のような不良資産が少しずつたまっていったり、新規先が取れなくなって販売先が硬直化してきたりと弱い部分を指標化し、目標を設定してメンテナンスと強化を行えば、より強い企業体力を身につけることができます。

 

上記はどれも重要な財務の役割ですが、特に重要なのは財務診断です。

 

問題が発生してから慌てて借入に動く経営者の方を多く見てきましたが、対応が後手に回っているので良い結果は得られません。財務とは、問題が発生した後にその役割を発揮するものではなく、問題が発生する前から取り組むことに、大きな価値があるものです。

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