速度の経済 事業システム設計4つの原理(3)

1.事業システム設計4つの原理

 

『事業システム戦略』第3章は事業システムの設計4原理として解説がなされています。4つの原理は”the economy of scale”, “the economy of scope”, “the economy of speed” , “the economy of core competence”となっています。この事情から第三章のコラムについてチャンドラーの「規模と範囲の経済」に関して選定しました。従って、次に取り上げる原理は「速度の経済」と「集中と外注化の経済」についてです。ここで注意しなければならないのは、置かれた状況によりどれを採用するかは異なるということです。

規模の経済の次に範囲の経済で、その次に速度の経済とはならないことを、A.D.チャンドラーは”scale and scope”説明しています。私事ですが、A.D.チャンドラーとマイケル・ポーター(ちなみに2名ともハーバード大学教授です)は大学卒業程度の常識の範囲内になっており、クラブやキャバクラのホステスとしては最低限の知識であろう、と同窓会で言ったところ、そんなことはあり得ないとそこにいた女子(高校の同窓会です)に言われました。妥協して「商学部、経営学部」卒業者で彼らの名前を知らなければモグリではないかと思っています。

 

2.速度の経済の障害

 

 

ツバメ(デンマーク、ブグホルム・ヴァイレ)

国鉄の最優等列車の名前は「より速く」を求めた結果となっています。昭和5年の超特急「燕」に始まり、ビジネス特急「こだま」、新幹線「ひかり」、”NOZOMI” superexpressと速度が速くなっています。もっともはやく飛ぶことができる鳥から始まり、音速、光速を経て、最後の「のぞみ」に至っては瞬間で「宇宙の果て」まで到達することができます。「人間ののぞみ」と光速、光速と物流の時間差、人間の活動時間と就業時間の差が速度の経済を考えるうえでの障害となります。ゆえに、ビジネスを設計する際には「このいかんともしがたいギャップ」をどのように解消するか、または期待値以上に速度を出すことができるようにするかが課題となります。

速度を落とすものは、物理的に速度を落とすものと社会的に速度を落とすものの2種類があります。前者は物流によって問題を解決するのに対して、後者はしくみで問題を解決するものになります。これらの解決策の組み合わせによって速度の経済を実現することになります。特にインターネットを活用するものは光速によるデータの移動を可能とするため物流ではなく仕組みを変更することによって速度の経済を追求します。Amazon.co.jpを例にすれば、Amazon.co.jpの内部では在庫を多品種そろえることにより速度の経済をしています。Amazon.co.jp以前の場合、書店の店頭にない書物は早くて3週間程度、通常1カ月は取り寄せをするのに時間がかかっていましたが、この取り寄せの時間を取り除くことにより速度の経済を実現します。

これに対してネット社会での「仕組みによる速度の経済」の取組が中途半端なものの代表例として国税申告システムe-Taxを挙げます。e-Taxは個人の確定申告時期を除き9時から21時までの12時間しか稼働しません。インターネットを活用する人間はどちらかといえば時間にとらわれないことを重視しますので、翌朝まで持ち越すことが堪えられないという特性があります。e-Taxが税理士に人気がない理由の一つに柔軟性がないことを挙げることができます。この柔軟性がないことと速度の経済がつながります。提出しようとすれば「時間外で受付ができない」とネットで言われることが「処理速度の遅さ」を感じます。このあたりを改良すると若干でも使い勝手が上がります。

速度の経済の障害の最後に、人間それ自身の存在を指摘します。人間の思い、声、動画、写真は今ではインターネット経由で伝達することができますが、本人自身は交通機関を利用する以外に移動方法はありません。インターネット上で知識を入手することができたとしても、人間からアドバイスを受けようとするとその方のところまで行くか来るかする必要があります。特に知識集約産業において知識労働者階層の人口集積が発生するのはこのためです。京都と福岡が大学の町といわれるのも狭い中に大学とその居住区が集積していることが大きいということです。

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