大阪電気軌道の開業 近畿日本鉄道を題材にM&Aを考える(1)

私は近鉄ファンです。近鉄鶴橋駅にいればいろいろな電車が行ったり来たりするため、一時間でもじっとすることができます。2015年は、近畿日本鉄道の直系の前身である大阪電気軌道奈良線が開業してちょうど101年です。これを受けて近畿日本鉄道について考察したいと思います。近畿日本鉄道は社名に「日本」がつく民営鉄道二社のうちのひとつであり、二大都市圏をつなぐ唯一の民営鉄道です。そもそも「日本」なる名前がつく鉄道は合併で成立したことを示しています。

 

まず、大阪電気軌道は大阪と奈良を結ぶ鉄道として企画されます。大阪から奈良間のルートの選定が必要です。この当時も今もそうですが大阪と奈良を結ぶルートは3つあります。大阪と奈良の間には生駒山地があるためこの山をどう越えるかによって路線のルートは決まります。一つ目は山を北または南に迂回して越えないと言うもの、二つ目は最短経路を使ってロープウエイなどを使って山を越えると言うもの、3つ目は山にトンネルを掘り通過すると言うものです。大阪電気軌道は大阪と奈良を最短経路で結び途中の生駒山はトンネルを掘削して越えるルートを選定します。トンネルの前後には急勾配があるため強力なモーターを装着することによって走破すると言う大胆な方法を選択します。

 

私は関西人なので関東の事情に疎いのですが、関西の民営鉄道は全てインターアーバンの性格、つまり都市間連絡の性格を持っています。また、関東の民営鉄道と違って、代替交通手段が存在していました。このため、全て電気鉄道を選択し(厳密に言えば南海電鉄は途中で電気鉄道に切り替える)ルート選択に特徴があります。

このうちルート選択は電気鉄道の先発組と後発組に分かれます。大阪電気軌道は後発組になります。先発組は徒歩や船といった他の交通手段からの乗客移転を目指せば良いのでスピード重視ではありません。また、乗客確保を容易することを狙って途中の集落をつなぐことを選択しました。このため大阪と神戸、京都、和歌山を最短経路で繋ぐのではなく、途中の集落を通ることになったため、必然的にカーブが多くなります。

 

これに対して後発組は同じ経路を選択することができません。第一に認可がおりないこと、第二に同じ所要時間である場合乗り換える必然性はあまりないことがその理由です。このため、差別化として高速化を図ることになります。大都市間を最短経路で高速に結ぶ戦略を採用します。この戦略を採用して開業した鉄道の一つが現在の近鉄奈良線です。関西ではこのほかに、阪神急行神戸線(現在の阪急神戸線)、京阪電鉄新京阪線(現在の阪急京都線)、阪和鉄道線(現在のJR阪和線)があります。

 

とは言え、近畿日本鉄道の前身である大阪電気軌道は、現在の運賃収入、営業路線キロ数が日本最大の民営鉄道とは思えないほどその出発点は苦しいものでした。

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