事業システム論が難しい理由(4) 売上を制御できないから

 売上=単価×数量で表現することができます。これは自明のことであると思いますが、単価と数量は制御できるのかといろんな方に尋ねましたところ、一度だけ「制御できる」という回答を得たことがあります。ただし、その方も単価を制御することも、数量を制御することも言いませんでした。単価や数量は「市場との対話」を通じて最適解を探りいれるものであって、最初に示しました「制御」の説明にある「意図した結果」を実現できるということはありません。事業計画を制定するうえで最大の山はまさしく「売り上げを制御できない」ことにあります。事業部長が計画を説明するときも、社長が計画を説明するときも「売上」計画を説明することが困難なのは、売上を制御することができないからです。制御できないものについて責任を取らされることを回避するために、売り上げの設計を甘くすることが起こります。

 売上を制御しないのであれば何を制御するのかということになりますが、「売上を制御できる」といった方に答えはあります。すべての場合で同じなのですが、売上を間接的に制御できる因子を探し出すことになります。意図する単価を実現するための方法はありますし、意図する数量を確保するための方法はあります。一般的にこれらの方法論がマーケティングとなります。意図する単価を設定するにはどうすればいいのか、数量を確保するためにはどうすればいいのかについての要素分解をし、制御可能な因子を探し出すのです。あくまで売り上げは間接的に制御することがポイントとなります。その制御可能な因子を探す具体的な方法がSWOTであったり、BSCであったりしますが、これらには指導するコンサルタントは多くいますが、その指導を受けてうまく使いこなした例がほとんどないという特徴があります。このため、経営者からはとても嫌われていますが、某政府系金融機関(口が裂けても「日本政策金融公庫」だとは言いません)が大好きなのでSWOTを全く使わなくていいということではありません。しかし、使わずに済めば使いたくないですね、SWOT分析。BSCになるともっと面倒ですので、利用は適切な助言者がいる場合に限定しましょう。

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