「経営学は会社経営に役立つか」

1.経営学はそのままでは経営者の役に立たない

 

最近、入山章栄著「世界の経営学者は今何を考えているのか」という書籍を買いました。私は世界の経営学者の地の最前線をサーベイしたかったために購入したのですが、読んでみて最初の感想は「最先端の経営学者の知は直ちに企業経営の第一線に使うことができない」のですが、これが直ちに経営学が不要であるということにつながりません。私事で恐縮ですが、私の父親は勝手に私にアドバイスをしてくれます。当然、人生経験を通じてのアドバイスですし、私の親ですから、私としては全く無視できるほど非人道的ではありません。が、「経営学は役に立たない」、「金を払ってまで知識を得るなんて馬鹿げている」ということには同意できません。

経営学がそのままで直ちに役に立たないのは、一定の体系を持って組み立てられた司式の体系であり、その目的は「科学的な方法で真理を説明する」ことにあるからです。このためにはどうしても抽象化が行われることになり、一定のモデルに従って説明しようとします。この方法をとる典型的な学問が数学の力を借りて物質の状態を説明しようとする物理学であり、経営学もそのようなモデルを目指しています。物理学とは異なり、経営学を学習する訓練を受けていなくても会社を経営している人間は数多くいるため、「経営学は役に立たない」、「役に立たないものに金を払うのは馬鹿」という意見が出ます。特に、経験を積んだ人間はこういうことを言う場合があります。しかし、実際の経営の世界を見れば、経営学を使った経営をするほうがより効果的であるということは間違いないです。

 

2.経営学を役立たせるには翻訳者が必要

 

では、経営学を役に立たせるにはどうすればいいのか、といえば、経営上の意思判断の根拠に経営学の叡知を使うということになりますが、このような使い方をするためには「知のフロンティアの最前線」にいる経営学者の言葉を自社に適応させる翻訳者の力を借りることになります。このような任務を受けているのは経営コンサルタントであり、経営学の叡知を自社に合った形で翻訳する人間を探していただくことになります。

ところで、経営コンサルタントは資格独占業務ではありません。中小企業診断士の資格がないと経営コンサルタントを名乗ってはいけないということもありません。このため、経営コンサルタントは参入障壁の低い産業です。このセリフはすでに経営学の知識を使っていますが、経営学の領域といいましても領域は広いですからその方がどの領域で長けているかを知っておく必要があります。私の場合は「経営戦略」と「会計を使った経営管理」については翻訳機能を持っていますが、それ以外については翻訳機能を持っていないと公言しています。他の方についてはわかりませんが、少なくとも私は、すべての知の領域について専門家としてふるまうことができると言い切れるだけの根拠を持っていません。私の場合は経営学修士と民事法専攻の法学修士ですから、経営戦略、管理会計、それと金商法、民事法だけが専門家としての領域です。

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