東京証券取引所第4の市場

 東京証券取引所には株式取引の本則市場に含まれる、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場があります。これらの市場の特徴は、証券会社に口座さえ持っていればどなたでも株式の売買をすることが可能です。この他に東京証券取引所には特則市場が存在します。これが今回の上場準備対象先市場である東京PROマーケットです。特則の語源は東京証券取引所上場規則の「特則」に定められているからです。最初に、本則市場と比較して特則市場である東京PROマーケットの特徴を見ていくことにしましょう。

 東京プロマーケット上場は本則市場上場と同様に東京証券取引所株式市場に上場させるという点では同じです。このため4桁の証券コードを得ることができますし、名刺についていると思いますが東証上場のステッカーをつけることができます。東京証券取引所では上場セレモニーで5回鐘をたたきますが、東京PROマーケットに上場する際にも5回鐘をたたくことができます。余談ですが、東京証券取引所に最初に上場する際に金と叩く木づちをもらうことができますが、指定替えをする際に金をたたくのですが、最初にもらった木づちを持っていくのだそうです。閑話休題、上場企業としてのメリットを受けることも本則市場への上場と同じです。

 これに対して、東京PROマーケットという市場は参加者が限定されます。PROマーケットという名前の由来はここから来ており、参加できるのは一定の条件を満たした特定投資家、所謂プロ投資家に限定されます。なぜこのような市場を作ったのかといえば、上場企業数を増やして東京証券取引所を活性化させることを意図したとされています。この上場企業数を増やすということがポイントとなります。上場企業数を増やすための仕掛けがいろいろとくわえられています。これからそれらを説明していきたいと考えています。

 まず最初に、東京PROマーケットへの上場基準は本則市場への上場基準と比較すると緩められています。具体的には本則市場には数値で示される形式基準が存在するのに対して東京プロマーケット上場に際しては形式基準がありません。このため、本則市場への上表とは異なり、赤字企業でも東京PROマーケット上場は可能です。次に、実質基準についても緩められています。実質基準は定性基準ですが、その具体的な内容は広く一般には公表されていません。しかし市場プレーヤーである証券会社と監査法人は把握していますので、全く内容が分からないということはありません。このことは上場申請へのハードルを下げる効果があります。言い換えるならば上場企業について本則市場に上場するよりハイリスクな会社が上場できるといえるでしょう。企業側のリスクを増大させるため、投資家側に対して制限を加えることによりマーケットの安全性を担保することになります。プロマーケットのプロたるゆえんはプロ投資家のみに開放されて居ることに由来します。この投資家を特定適格投資家といい、機関投資家か一定の条件を満たした個人投資家に限定されています。企業側のハードルを下げた分だけ、参加できる投資家に制限を加えて市場の安全性を担保しようとしています。

 実質基準を緩めることについて具体的な内部管理体制の整備内容について、本則市場への上場に求められる点と大きく異なります。最初に新規上場に際して金融商品取引法第193条の2に規定する監査証明書の発行は1期間だけでよいことになっています。このため、上場準備期間を短縮することができます。本則市場への上場の場合少なくとも親戚の3期前からは準備に入りますが、東京PROマーケット上場準備は申請2期前の後半からでも間に合います。次に上場申請会社にとって内部管理体制を強化するための人員の確保が緩められていることが特徴です。上場申請企業は管理部門の強化が求められます。このこと自体に違いはありませんが、本則市場への上場申請企業は一部部門の内製化が求められるのに対して、東京PROマーケット上場申請会社には内製化が求められていることはありません。むしろ積極的に外部門家の活用が推奨されています。この点が本則市場上場申請会社とは異なります。株式市場に上場へと導く主幹事証券会社が存在しますが本則市場ではそのまま主幹事証券会社といいますが、PROマーケットに上場へと導く主幹事証券会社はJ-Adviserといいます。このJ-Adviser制度がプロマーケットの大きな特徴です。J-Adviserは東京証券取引所からの求めに応じて上場審査を行うほか、上場後の適時開示においても必要に応じて指導を行い、また適時開示ついてはJ-Adviserが責任をもって行う点が本則市場とは異なります。このJ-Adviser制度が東京PROマーケットのリスク低減を支える一つの装置になっています。

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