事業コンセプトとスローガン 解題(2) OFFはわかる

1.西野カナとWALKMAN

2012年の紅白歌合戦に松阪市出身の歌手西野カナが出演していました。西野カナはソニーミュージックエンターテイメントに所属しています。このため、201212月現在でオンエアされているWALKMANCFに主題歌とともに登場します。通常のビジネスマンの認識、ないしは日本人の認識ではソニーはエレクトロニクス企業であり、EDINETの分類でもエレクトロニクス企業と分類されています。私自身は西野カナがどの程度の歌手なのか知りませんが、初代WALKMANが与えたインパクトほどには影響力はないと判断しています。

 では、現在のソニーから見て売るものは、WALKMANなのか西野カナなのかといわれると間違いなく西野カナです。EDINETの分類はどうであれ、20123月期の決算を見る限り、ソニーはエンターテイメントと金融の会社としか理解できませんし、2005年以降エレクトロニクス部門出身者がソニーのCEOについてはいません。すべてについてそうとは言いませんが、社長が主流部門から選出されるとみなすならば、ソニーは1995年以降エレクトロニクス企業ではありません。

 

現在のWALKMANの製品ページはこちら

http://www.sony.jp/walkman/

西野カナさんがウオークマンを聞いております。

念のため、ソニーのホームページに行きますと一番の売りは007です。

 

2.ONとOFF

 さて、出井さんが初めて世に問うた著作は”ONOFF”です。本著作は出井さんが社内に向けて発信した内容を抜粋して、仕事中のONの部分と趣味のOFFの世界を述べたものです。私がこの本の存在を知ったのは宮崎琢磨著「技術空洞 Lost Technical Capabilities」からで、それも批判的なコメントを見てから読んだものですからそれなりにバイアスがかかっています。このため、およそビジネス書には関心のない私の妻に読んでもらいました。その感想は、「ソニーの社長ともなると高尚な趣味を持つのだなあ」でした。ONの部分に至っては「なんでこれを出版したのか?」です。

 

ONとOFF 文庫版

 実のところ言えば、出井さんが社長に就任した当初、SONYはれっきとしたAV機器を中心としたアナログな会社だったのですが、アナログ危機が没落していく中で危機感を持って仕事をしていたことがわかります。悲しいことに、出井さんの危機感とは裏腹にONの部分では「危機感が伝わらない」のです。出井さんはマーケティング出身ですから、メッセージを使って何かを伝達することについては「プロフェッショナル中のプロフェッショナル」な方ですから言葉を選んで発信していたのでしょう。ただ、危機感の発信は言葉だけでは足りないということがわかっています。今までとは違う方向に会社を向けようとするとき、言葉だけでなく行動を伴わないと説得力がない。もし、この本の記載内容で出井さんに同意できない点があるとするならば、ビルゲイツやジャックウエルチと会談したり、ダボス会議に行くのではなく開発現場や販売の現場をめぐって社員を鼓舞することではないかと思いました。

 また、この本の趣旨はONOFFをそれぞれ充実した中で仕事の成果を上げようということがありますので、OFFの話が充実しています。出井さんは「ワインとゴルフ」についてはカルロス・ゴーンルノーCEO兼日産自動車CEOと比較すると「知識は出井さんにかないません」ということだそうです。ご本人が開設の中でそういっているのですからそうなんでしょう。ただ、出井さんはよほどゴルフ好きなようで、ONの中にも「ゴルフ」での比喩が飛び出す始末です。

 私事で申し訳ないのですが、東京での定宿で12時に就寝しようとすると眼前に広がる品川のソニーテクニカルセンターが煌々と電気をつけていますから、まだまだ働いている人間がいる中で寝るとはけしからんなあ、といつも思います。おまけにソニーに部品を納入する業者は「電話を受けてから品川のテクニカルセンターへ30分以内で駆けつけることができる企業」に限定されているということを聞きました。大体呼びつけるのは午後9時以降だそうです。このような状態を見聞きするにつけ「ワインとゴルフの日々」はないよな、と思ってしまいます。念のため申し添えすますと、ソニーが夜中に動くのは欧米の拠点が動き出す時間帯が日本の真夜中に当たるからだそうです。

 いずれにしましても、世に問うてはまずいだろうというのが私の率直な感想でした。

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