東証グロース市場上場維持基準の見直しに思う

2025年4月に、東京証券取引所はグロース市場における上場維持基準の変更する意思がある旨を発表しました。背景には、証券市場を資金調達市場として機能させたいということがあります、知らんけど。株式上場は第一義的に資金調達を行うこと、第二義的に会社の所有権の売買を行うことを目的とします。証券市場において会社所有権の売買は常に行われますが、資金調達は常に行われるとは限りません。資金調達を行うためにはいくつかの壁が存在し、この壁を乗り越える必要があります。

第一の壁は、借入よりコストの高い資金調達に耐えられる収益性が必要となることです。金融機関からの調達は金利コストを支払うことになります。これに対して、資本市場からの調達は資金の出し手が借入よりも高い収益性を求めることから、一般的に借入金利より高いコストを支払うことが要求されます。上場企業における平均資本コストは5%程度とされていますが、資金調達を行う際には企業の安全性と成長性を検討し、さらに銀行よりリスクを背負うことから平均より高いことが求められます。

第二の壁は、上場株式に値段がつかなければならないということです。意外に思われるかもしれませんが、かなりの上場企業において上場株式に値段がついていません。値段がつかないことは株式が売れないことを意味し、資本市場から資金調達ができないことを意味します。値段がつかない背景には投資家から注目されない点があります。上場企業は約3800社存在しますが、聞いたことがないであろう企業も多数あります。日本経済新聞の株式欄をご覧になればわかるかと思います。

第三の壁は株価上昇が必要であるということです。資金調達を行うためには多量の株式が市場に出ます。このため、いったんは株価が下がります。この現象を希釈化といいますが、株価が下がると投資家は売却する意思が働きますので、さらに株価が下がります。希釈化を超えて株価上昇を図るには事業の成長性が必要となります。

このような壁が存在することから、株式上場時の調達額が低くなる、二回目の調達が行えないという現象がグロース市場に上場している案件では少なくありません。資金調達が活発でない株式市場は投資家から見れば魅力的でないので、東京証券取引所はグロース市場の魅力を向上させる意図をもって維持基準を見直そうとするようです。知らんけど。

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