事業の創造 解題(7) 梅田地区の特性

 

大阪駅航空写真。1985年度撮影 国土情報航空写真 国土交通省

阪急電鉄は顧客創造のためにターミナルの活用を検討します。前回は宝塚ターミナルについて取り上げましたが、今回は梅田ターミナルについて取り上げます。現在のJR大阪駅周辺は大阪でも有数の繁華街ですが、基本的にJRは都市間連絡鉄道ですから中心街には駅がないのです。札幌、仙台、東京、名古屋、広島、高松、福岡は中心街からずれています。大阪駅の立地も大阪と京都及び神戸への直通に都合がよいという観点から行いました。実を言えば、鉄道省にとって、運転の都合だけでいえば大阪駅の立地は現在の新大阪駅の場所付近のほうが都合がよいのですが、当時の大阪市域の北端であった梅田地区をターミナルにします。

阪急電鉄が当時の中心街であった堺筋高麗橋付近にターミナルを置けなかったのはひとえに大阪市の都市政策によるもので、阪神電鉄が梅田にターミナルを置いているのと同じ理由です。すなわち市内中心部の交通は市電によるという大阪市の交通政策によります。この影響が完全に消えるのは2009年に阪神なんば線が開業する時です。このため、当時は梅田ターミナルも開発対象地ということになります。阪急電鉄のターミナル梅田が大阪駅の隣に設置されたこともあり、阪急電鉄が梅田を開発します。

阪急百貨店うめだ本店が流動客を吸引する能力が高いため、梅田には阪急百貨店に来店した客を当て込んだ施設が開設されます。最初に開設されたのは阪神百貨店でしょうが、その後梅田地区には高島屋を除く主要な百貨店である、三越伊勢丹、大丸が建設されます。阪急百貨店では収容しきれなかった流動客を吸収する専門店街、オフィス群が建設されたことにより梅田地区は大阪でもぬきんでた繁華街になりました。梅田地区にやってくる流動客のうち少なからずの人が阪急電車を利用します。さらに、梅田における阪急のアドバンテージを示す例として、JR西日本が大阪駅ビル北口の減損処理を行うと発表したことがあります。阪急は自ら開発した梅田における「のれん」をしっかりと守っている例となります。

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