企業財務入門(15) 目標とする財務指標は「現預金月商比率」だけに絞りましょう 

『中小企業経営に過剰な財務指標管理は不要です。目標とする財務指標は「現預金月商比率」だけに絞りましょう。』

IMG_0578最近のビックニュースではシャープが「法人税法上の中小企業になる」ということが挙げられます。シャープが減資して資本金1億円になって税法上中小企業になるからといってシャープと我々を同列に考えることができないのは自明なのですが、ここで言う中小企業とは資本金ではなく人員規模でそろそろ機能別組織を考えないとというレベルの企業を指します。売上高で数億円以下というところです。

決算書を活用するものとして、経営分析が存在します。経営分析の教科書を開きますと、財務指標について解説がなされています。経営の状態を財務面から分析する場合に使用されるのが財務指標です。財務指標とは収益性、安全性、効率性、成長性、資金繰りを見るものです。

代表的なものは、企業の安全性を見る流動比率や自己資本比率、収益性を見る各種利益率、効率性を見る各種回転率などがあります。銀行の格付も財務指標によってランク付けしています。当然ながら財務指標が良い方が好ましいのですが、我々中小企業の場合、あまり財務指標を意識した経営をする必要はないと思います。

例えば、企業の安全性を見る代表的な財務指標に自己資本比率があります。他人資本(借入)を活用して積極的に事業拡大を目指す企業よりも、自己資本の範囲内で小さく事業をまとめている企業の方が、数値が良くなる傾向があります。経営の本当の目的は「世界中の患者を救う医療機器メーカーになること」であったとしても、自己資本比率を気にしすぎていては、いつまでたっても家内工業から脱却できません。

中日ドラゴンズの落合博満ゼネラルマネジャーはバッティング技術はシンプルを追求するものだとおっしゃっていますが、これは何事も極めようとすると本質はシンプルなものになるということを伝えたいのだと思います。経営にも同じことが当てはまると思います。どのような事象もシンプルなものの組み合わせです。数ある財務指標を複雑に考えるのではなく、我々中小企業の場合、目標とする財務指標を「現預金月商比率」だけに絞ってみてはいかがでしょうか。

現預金月商比率とは、月商の何ヶ月分の現預金を持っているかを表した指標です。この指標に着目する理由は、経営目標を達成するためには、単純に「お金が必要」だからです。「店舗を出す」「機械を買う」「優秀な人材を雇用する」…「お金」が必要です。

 

■「現預金月商比率」を上げる代表的な方法は以下になります。

・利益を出す。

・売上金を早く回収する。

・支払いを遅くする。

・借入をする。

 

仮に「売上高伸び率」を目標とした場合、値引きや分割払いに応じてまで「売上高」に固執してしまうことがあります。借入が容易にできる中堅中小企業や大企業はそれでも良いかもしれませんが、借入が簡単ではない中小企業にとっては、手元資金が目減りする要因になります。中小企業の財務指針は「売上高が増えるかどうか」よりも「手元現預金が増えるか否か」であるべきです。

確かに売上代金を早く回収することや支払いを遅くすることができると資金繰りは改善します。キャッシュフロー計算書が理解できない場合、体感としてこのことを理解していないからだと私は思うのですが、現実に中小企業がこんなことはできないことが多いです。だから積極的に借入よというわけにはいきませんが、借入を実施できる場合は売上代金早期化と支払いサイクル遅延化はできることが多いのが不思議なところです。

目標の程度加減ですが、最低でも月商の1ヶ月分程度の現預金は常時保有しておきたいものです。最初のうちは現預金の中身が借入れでも構いません。次に月商の3ヶ月分が持てるようになったら、2か月分を投資してさらなる現預金の増加を狙います。

このサイクルを、規模の拡大を伴いながら繰り返していったとき、全ての財務指標が良い数値になっているはずです。

 

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