企業財務入門(22) 『金融機関の本質』

IMG_0323私は、マル経融資から始まって、保証協会付き融資、プロパー融資、シンジケートローン、エクイティファイナンス等、合計百億円以上の融資の受けた経験があります。

この経験を踏まえて、金融機関の融資の本質を整理してみます。

ほとんどの会社が、金融機関から資金の借り入れを起こして事業を成長させています。金融機関とのお付き合いは多くの会社にとって必須です。一方、金融機関は預金者からの預金をその貸し出しの原資に充てています。また預金者は、その預金が100%守られているものと信じています。実際に、決済性の口座であれば全額、それ以外の口座でも1,000万円までは保証されています。

 

金融機関の貸出しの姿勢が自ずと浮かび上がってきます。

・金融機関は、会社が厳しいから助けてあげる…この発想での貸出しを行いません。いや、出来ないのです。

・金融機関は、企業が成長する時の運転資金を融資します。

・金融機関は、企業が投資を行って長期で回収するためのつなぎ資金を融資します。

あくまでも前向きな資金、例外的に好転するためのサポート資金を融資します。晴れれば傘を貸し、雨が降りだせば傘を取り上げると言われるのは上記の所以でしょう。良い悪いではなく、これが金融機関の本質です。

 

◆「会社が厳しいからお金を貸して欲しい」

案外多く発せられる言葉ですが、この言葉は最悪です。絶対に使ってはいけません。

上記が事実であれば、預金者のお金を守るために、早く資金を回収しなければなりません。

これが金融機関の勤めです。

「厳しいのであれば融資できません。それどころか、過去に融資した分も早く回収させてもらいます。」

金融機関はこう思っています。

 

◆「…で厳しく見えるが、…で好転するので、そのつなぎ資金を借りたい。」

せめてこの言葉が必要です。上記が事実であれば、金融機関は融資を検討する義務があります。

金融機関のミッションです。検討するはずです。

 

一:金融機関対応の要諦が見えてきました。

1.前向きな資金需要、前向きなストーリーが必要です。

借入れはすべて前向きな資金でなくてはなりません。(保証協会の緊急融資は例外です。)

従って、借入れの申し込み時は、すべて前向きなストーリーを組み立ててください。

2、キャッシュポジションを高いレベルで維持してください。

晴れている時にたくさん借りておくことが重要です。金利を払ってでも余裕資金を持つ、私の持論です。

キャッシュポジションは常に高めに設定しましょう。

3、良い決算書の整備が必要です。

常に金融機関が貸出しやすい決算書に仕上げておくことも大切です。

また、最低限3ヵ月毎の試算表は確実に整えておくことも必要です。

 

二:銀行(銀行に限定します)が厳しい対応を迫ってきた時の対応法について考えてみましょう。

 

◆前提として、銀行は特権階級です。

銀行は金融庁(国)から特別な権利を与えられています。

銀行は、預金として広く個人・法人から資金を預かることができます。

これは銀行に与えられた特権であり、一般の企業、金融業者には許されていません。

そして、預金者一行一名義当たり1,000万円までの保証・保険(保険料は銀行自身が払っていますが…)を付けてもらっています。(決済性預金は無制限です。)スズメの涙ほどの金利で、保証付きの預金を集めて、これを貸出しの原資にして、更には保証協会の仕組みを活用してリスクを最小限に抑えるビジネスが許されるのが銀行です。

まさに、特権階級です。

◆特権は、厳格なコンプライアンスの上に成り立ちます。

国はこの特権を銀行に与える代わりに、極めて厳格な法令順守(コンプライアンス)を要求しています。

コンプライアンス違反は厳罰です。

 

◆ある事例…

私が最近対応した事案です。

昨年の4月にモラトリアム対応で、返済猶予を受けた会社がありました。その会社は、その時点での800万円の定期預金と、その後毎月50万円の定期積み立てをその銀行に対して行っていました。本年の6月時点で預金残高は1,500万円超ありました。会社がその預金を引き出そうとした時に、その銀行は解約に応じてくれませんでした。

私が相談を受けた時、社長はこの定期を担保提供した記憶は一切ない、と言い切っておられました。(確信していました。)ところが契約書を確認してみると、明確に担保提供の旨の記載がありました。

この契約書は昨年の4月の契約です。法律的には100%銀行の言い分が正ですが、社長は担保提供した認識が無いと確信しています。銀行と真摯に話し合い、当時の銀行から社長への説明の経緯等の確認を行なう過程で、預金の全額解除の申入れを受けました。(当方も少し譲りましたが…)

何故、こうなったか?

この銀行がコンプライアンスを重視したからです。多分、自行側にも、説明責任の欠落があった可能性があることに気づいてくれたのでしょう。(私はこの点を論点に議論しました。)

 

◆銀行は総じて大人です。

厳格な法令順守(コンプライアンス)の上に成り立っている銀行に、理不尽な対応は許されないのです。

銀行とは冷静に筋を通して話してください。筋が重要です。

 

三:銀行からの新規の借り入れが難しい時は、返済猶予をお願いしましょう。

 

◆金融機関の融資は前向きな資金のみです。

例外的に好転するためのサポート資金を融資するケースもありますが、融資対象の資金使途は…企業が成長する時の運転資金、企業が投資を行って長期で回収するためのつなぎ資金のみです。。従って、どんな状況下でも会社は良い状態にある、又は、好転しつつある…との理論武装が必要です。これは例外はないものだと肝に銘じてください。

 

◆ 真に厳しい状況に陥った時はどうするか?

金融機関からの新規の融資は期待できません。

・二期連続の赤字・債務超過は100%無理です。

・黒字でも、借入枠一杯の時の減収・減益、こんな時も難しいです。

 

◆ 新規の融資が受けられない時はどうするか?

返済計画の見直し、リスケ(リ・スケジュール)を検討しましょう。

金融機関は、厳しい状況の会社に追加の資金を融資するよりは、返済方法・期間の見直しの方がはるかに容易です。

・新規融資を受けられないと判断したら、リスケ交渉に移行してください。

・金融機関は、総じてリスケに積極的ではありません。のらりくらり時間が経過するケースが良くあります。

会社側が意思を持ってしっかり進めてください。

・リスケを承諾する時の金融機関側の論理は、『今は厳しいが、リスケを実行することでこの会社は持ち直し、近い将来健全に返済してくれる』です。

◆ リスケの時も前向きな理由が必要です。

金融機関は、今も将来もダメな会社と判断した時は回収にかかります。

今はダメでも、将来の見込みがある会社、この理論武装が必要です。

 

◆ 銀行は特権階級です。

当事務所がリスケ交渉をサポートする時の論理構成は、『今は良くないが、近い将来に見込みがある会社をサポートするのは(特権階級の)銀行の使命であるはずだ。』この一点です。

再生のストーリーを組み立てて筋を通して臨んでください。

銀行は大人の対応を取ってくれるはずです。

 

◆ リスケの内容

元金返済額の減額、減額幅は最大100%です。金利は若干上乗せされるケースもあります。リスケと言う手法は昔からあります。有効に活用しましょう。繰り返しますが、銀行とは冷静に筋を通して話してください。筋が重要です。

 

※金融機関との上手なお付き合いをお願いします。弊社は、金融機関対応の助言に力を入れています。

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