「孫子」入門(4) 「詭道十三変」

 

IMG_0107.JPG (2)『孫子』は「五事七計詭道十三変」と表現されます。前回は「七計」を取り上げましたが、今回は計画実行要素としての「詭道十三変」を取り上げます。孫子は「戦争行為の本質は敵を欺くことにある」といって13つの要素を挙げます。ここで、13の要素を検討するのは、経営実践を目的として孫子を読むわれわれにとってはあまり重要視する必要はないと思います。ビジネスを戦いだと称する人もいますが、ビジネスにおいてWIN-WINの関係にある中では少しずれているような気もするためです。

 では何か「詭道」ことなのかを考えるにあたり、正道を考えると見えてくるものがあると考えられます。そこでここでは、前回に引き続きME・ポーター教授の『競争の戦略』第2章の「競争の基本戦略」を取り上げたいと思います。これは提唱者のことはともかく話を聞いたことがあると思われ、ある程度普遍的に知られているとみなすことができるので正道と考えてよいかと思います。

 ポーター教授によると「5つの競争要因に対処する場合、他社に打ち勝つ戦略ための3つの基本戦略がある

  1.     コストリーダーシップ
  2.     差別化
  3.     集中

時には、2つ以上を主目的にすることがある」といいます。この理論を知ってか知らずかは私には不明ですが、「当社はシェアナンバー1だからコストリーダーシップだ」、「うちは独自性があるから差別化だ」、「我々はニッチだから集中だ」といったことをよく聞きます。我々はポーター理論を解明することを目的としていませんので、これらについて深入りしませんが、これら3つの行動はある種の人にとっての共通言語になっていることは事実です。

 しかし、孫子は戦争行為の本質は欺く、つまり裏をかくことであるといいます。実際にはあり得ませんがポーター理論を皆が学習し、実践したとすると孫子の言う「兵は詭道なりから外れる」ことになります。ここでポーターを持ち出したのはムック本にも多数ポーターのこの3つの戦略について解説がなされているために、普遍化しているといえるからです。我々が戦略を立案し、実行に移す段階でWIN-WINの関係の中にも相手を欺く必要があるということです。欺くといえばだまして利益を吸い上げるイメージを与える用語ですが、実際にはビジネスにおいては期待を裏切ってそれ以上のものを提供するという意味があります。ISO9001:2008が要求する「顧客満足」ではないレベルの顧客満足を得るために、どうすれば「欺けるか」を常に考えることが事業者に求められた「詭道十三変」であり、「詭道十三変」を探す手掛かりにポーターの「競争の基本戦略」を活用することができるということです。あくまで手がかりであってそのまま採用するとは限らないということです。

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