企業財務入門(6) 担保の管理表を作成しましょう

借入を起こすには無担保無保証を目指すのですが、我々中小零細企業が借入を起こす場合、個人連帯保証や不動産担保を求められることがほとんどです。

 

不動産担保について、顧問先様で実際にあった事例をご紹介します。

 予め知っていただきたいのは、抵当権と根抵当権には違いがあるということです。そこを念頭に置きながら下記文章をお読みください。

A社は2代目の社長様が経営している企業です。先代から無借金で会社を引き継いだ後、現社長様はD行で1億円を借り入れ本社を購入されました。全額保証協会の保証付き融資で、もちろん購入した本社の土地と建物をD行に担保提供しています。

 

今回、他行への借換えを検討する過程で、本社の土地建物以外に、本人も認識していない担保を保証協会に提供していることが判明しました。先代の社長様が所有する、前本社の土地と建物です。なぜこのような事になったのでしょうか。

 

先代の社長様は、前本社の土地と建物を担保に、I行で融資を受けた経緯がありました。保証協会の保証付き融資ですが、借入はすぐに完済してしまったようです。I行の担当者には、担保の抹消を依頼したこともあったようですが、わざわざ抹消する必要もないでしょうと言われてそのままにしていました。先代は、この担保をI行に提供していると思っておりましたが、実は担保権者はI行ではなく保証協会でした。

 

その後、現社長様がI行とは別のD行で、保証付きの融資を受けたため、先代の土地と建物が保証協会の担保になってしまいました。

 

保証協会の保証付き融資を有担保で受ける場合、2通りのケースがあります。ひとつは、貸出銀行が担保を取得し、保証協会がその担保を条件として保証をするケース、もうひとつは、保証協会が直接担保設定をするケースです。保証協会が直接設定をしている場合、どこの銀行から保証協会を利用しても担保が活かされます。

 

新たに1億円を融資したD行は、先代の土地と建物が保証協会の担保になっていたことは分かっていたはずです。D行の不親切を責めることもできますが、I行にも、保証協会にも、先代の社長様にも、現社長様にも、事前に解除できるチャンスはあったかもしれません。

 

他の会社様でも十分に起こりうる事柄です。担保の管理表を作成し、定期的にチェックすることをお勧めします。

 

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