企業財務入門(5) 借入の目安

本日は、財務活動を行う上での良くある疑問のひとつ「適正な借入の額はどれくらいか?」について考えます。借入の種類は大きく分けて2つあります。運転資金と設備資金です。借入の適正額を考える場合、それぞれに分けて考える必要があります。

 

先ずは、経常運転資金を算出する以下の計算式を覚えてください。

 

経常運転資金=売上債権(受取手形、売掛金等)+在庫-買入債務(支払手形、買掛金等)

 

貸借対照表を見て、上記の式に当てはめれば貴社の経常運転資金の額がわかります。経常運転資金とは、現在と同じ取引条件で商売を継続した場合、常に必要となる資金の額です。従って、適正な運転資金の借入額は、経常運転資金の額と同額です。但し、約定返済付きの長期運転資金として調達する場合は、約定返済額を考慮して、経常運転資金の2倍程度を目安の上限にすると良いでしょう。

ここで注意することは、「現在と同じ取引条件で」ということです。現在と同じ取引条件でといえば、月末締の翌月末払といった支払条件と受取条件を指すことが一般的です。確かに運転資金を考える上ではこの部分も重要ですが、売上高や仕入高といった授受数量の増大も条件になります。

 

次に、設備資金借入の考え方です。設備資金を借りる場合は、その設備の導入で見込まれる売上の3分の1程度、かつ、キャッシュフロー見込み額(減価償却+純利益)の10倍以内を目安にすると健全です。但し、設備資金の借入額は「見込み」の売上やキャッシュフローを前提にしておりますので、「見込み」が甘ければ、たちまち目安をオーバーしてしまいます。

ただ、「見込み」を厳しくすると設備投資を控えることになります。設備投資が必要であると判断するならば、設備投資を控えることはできません。更に、設備投資はいったん行うと元に戻すことはできませんので、慎重になる必要はあります。それでも、設備投資をするな、とは言いません。

 

借入は負のリスクがあるため、無借金経営を目指しておられる経営者の方も多いのではないでしょうか。私を含め数字を扱う人間は負のリスクを嫌いますので、借入は出来るだけしない様にと税理士さんや先輩から指導を受けている多いことでしょう。もちろん、無借金経営は理想ですが、純資産の小さな中小企業にとっては現実的ではありません。適正な借入額を知って、その範囲内にコントロールすることが重要です。

 

長期運転資金の借入は、経常運転資金の2倍程度が目安です。設備資金の借入は、見込み売上高の3分の1程度、かつ年間見込みキャッシュフローの10倍以内が適正です。業種によっては当てはまらないケースもありますが、上記を超える借入がある場合は、借入をした資金が、事業とは関係の無いところや赤字の補てんに流れている可能性があります。

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