企業財務入門(1) 始めに出資ありき

 

アメリカの書籍は詳しく説明します。

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 新約聖書のヨハネによる福音書の始まりは「始めに言葉ありき」です。今はこの言葉の解釈をすることが目的ではありませんが、これを事業運営に当てはめますと「始めに出資ありき」となります。経営において資源とされるものに、「人・モノ・金・情報」といいますが、最初に必要になるものは資金です。資金がなければ店を構えることもできず、材料を購入することもできませんが、最初に事業を立ち上げようかどうか悩まれる方はあまり重視しないように思いますし、事業を始めた方についてもお金を巡る仕事はどちらかといえば遠ざかりたいという傾向があります。これは資金見通しを立てるためには帳簿付けと将来見通しが必要となるのですが、どちらもかなり面倒であることが由来です。

 さて、企業財務とはどの領域を指すのかということについて最初に決めておきたいと思います。まず対象者は企業、つまり営利を目的として活動する法人と個人です。企業財務は会社だけが必要なわけではありません。対象物は企業活動にかかわる資金の出入りすべてです。言い換えるならば、いったん事業を始めたら、他所に迷惑をかけることなく企業活動を終了させるための資金調達をし、支出すること全部を言います。従って、企業財務の領域はかなり広いのです。

 では、最初に出資ありきですが、事業を始めるにあたって法人ならば資本金、個人ならば元入金が必要になります。かのカール=マルクスはこの出資について「本源的蓄積」と呼び、労働者、この場合は農民を指します、からの搾取によって確保したといいます。実際に事業を始めようとするとこのことが嘘であることが直ちにわかります。少なくとも私の周りには搾取されるべき労働者がいないのです。というわけで、起業家自身が起業以前の収入から搾取されることになることが多いです。

 出資の特性は、例外はありますがいったん行われたら何人たりとも引き出すことができないということにあります。物の本によれば「返済義務のないお金」と述べられることもありますがその通りです。返済義務がないということは経営者にとって魅力があるように聞こえます。さらに、資本維持義務がありまして法人は原則的に資本金を減らすことができません。

 では、経営者が出資を受けるにあたり覚悟しなければならないことは何かということですが、最初に払い込んだ出資金より多くの価値をもたらせる必要があるということです。これは何も最初の1年で実現する必要はありませんが、少なくとも3年から5年後には「結果を求められます」。出身者は出資するのだからそれなりの見返りを求めます。ただ、出資者が経営者だけの場合、税金を払いたくないから赤字で良いのだという見解があることは承知していますし、そのことを否定するつもりはありませんが、企業財務の観点からは問題になることが多いです。そのことは追々述べることにします。

 出資を受けるにあたり必要となるのは、「なぜあなたは私に出資しなければならないのか」についての説明です。何をどのようにして出資金の価値を上げるのかを説明しなければなりませんが、これが面倒です。出資者のほとんどは「私」の人間性と事業について無知だから、「そのようなことはわかりきっているのではないか」というレベルまで説明する必要がありますし、出資者がわかる言語で説明しなければなりません。通常出資者がわかる言語を「企業会計」といいますが、起業家にこれが使える人はあまりいません。ですから、起業時には適切なアドバイザーが必要となることが多いです。

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