事業システム論が難しい理由(6) 実行可能性の担保が困難であるから

  近畿財務局が実施した『地域密着型金融に関する会議』に参加して思ったのですが、金融機関は熱心に『ターンアラウンド』に取り組んでいると言う報告が相次ぎました。金融機関を主たる対象にした会議ですからそのように発表することになりますし、リレーショナルバンキングによれば物的ないしは人的担保ではなく事業計画をベースにして貸し出しを行うようにせよ、と言う指導が行われているからということも手伝って金融機関はちゃんとやっていると言う発表が行われたと言うことでしょう。特に財務局が主催しているため、うまく言っていると思われる発表が中心となるのは当然です。

 このシンポジウムで問題になったのは『経営改善計画』の実行可能性です。実行可能な経営改善計画は「精度の高い経営改善計画」と称していました。これに対して実行可能ではない経営改善計画の存在も認めており、その背景には金融機関は熱心に経営改善計画の作成を行ったが経営者の危機意識が足りないから実行不可能であると言う発表が行われていました。ここで問題となっているのは「事業計画」ではなく経営改善計画ですから、いわゆる金融検査マニュアルでは「要注意先」ないしは「破綻懸念先」と扱われている企業を対象として作成されるものです。このような企業の場合、営業、生産、購買、事務管理のすべてにわたって何かしらの問題点が潜んでいます。これをどれだけ抽出し、企業が自分の問題として捉えるかどうかがかぎとなります。これを「経営者の意識がついていっていない」と言うことで片付けている状態が問題の根本にあるので、支援者は経営者に問題があるという現状認識をさせるかが課題となります。

 なるほど経営改善計画の立案を必要とする状態までにしてしまった経営者にも問題は有るかもしれませんが、実現可能な経営改善計画を立案し、その結果を受けて金融支援をすることが筋なのではないでしょうか。経営改善計画を作成することそれ自体が危機的状況であることを認識させることは必要です。そうでない状態で情熱のある支援者が中心となって経営改善計画を立案する場合、経営改善計画が空回りする内容になるのではないかと推測しています。 

 経営改善計画ですら実行可能性を担保することが困難ですから、通常の事業計画の実行可能性の担保はさらに難しいのは確かでしょう。でも、実行可能と実現可能は違います。必要なのは地に足のついた企業活動を行うための事業計画です。近畿財務局主催の『地域密着型金融に関する会議』に参加してそのようなことを考えました。

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