正しい専門家の使い方

正しい医者の掛かり方と大それたことを言っていますが、ここで言いたいのは「患者は、いったん信頼したならば、信頼した医師に困っていることならば何でも話したほうがよい」ということです。私が一患者として医師と接してこのように考えています。そもそも、日本の医療は「3時間待ちの3分診療」と言われています。この言葉には大病院に患者が集中し病院の医師の患者一人当たりの診察時間が短いことを揶揄しているのですが、私の見るところ、大病院の患者だけでなく、どんな医者に対しても再診の方にみられる傾向に感じました。

私がこのことを強く感じたのは俳優の萩原流行氏の講演を聞いたときです。彼が「私は医者に処方箋をもらいに行くんです。処方箋に用事はあるが、処方箋を発行する医師には一言二言いうしかない」と言った時です。彼は双極性障害で通院しているのですが、医師の問いかけに対して「前と変わらないです」とだけ言うのだそうです。私が通院したことのある医師に聞けば、「前と変わらない」と言われると医師としては同じ処方をする以外に打つ手はないと言っていました。その医師は、困っていることがあれば包み隠さず言ってほしいとおっしゃったので、私は毎回20分程度診察室で先生と話していました。確かに、新入社員研修を受けた時に言った講師の言葉がいまだに忘れません。「私は、君たちはどこで分からなくなったのか行ってもらわないとわからない、だからわからないことが出た時にはその場ですぐに言え。」

もっとも、患者側からすれば「言葉で説明しなくても雰囲気で察してほしい」、「最近どうですかと聞かれても答えようがない」という気持ちなのが正直なところです。

さて、この話をしたのは、医師以外の専門家の利用法を知っていただくことにつながるからです。最初に「専門家をいったん信頼したからには」と述べましたが、問題点を述べるためにはその専門家は「私の問題点の解決を図る」のに足りる能力と人格を持つことが必要となります。したがって、専門家を吟味するに当たっては、能力と人格の面でじっくり観察する必要があります。能力がない専門家に問題点の診断と処方を切ってもらうと誤診になりますし、人格に問題がある専門家ならばそれだけで会うのが嫌になります。ご自身に「合う」専門家をじっくりと探すことが重要と思います。

専門家に相談しようとするのは何か困ったことがあるからと断言してよいでしょうが、困っていると感じられることと、困っていることの原因は異なることが多いのが実際です。我々専門家は困っている現象ではなくて困っている原因を除去しようとします。そのため、先入観を排除して困っている現象を目、耳、鼻、時には皮膚から聞きとり、その中から困っている現象をすべて説明しうる原因を探し出そうとします。この時に困っている現象は少ないより多いに越したことはありません。ですから、専門家に対しては「雰囲気で察して欲しい」というより「どんなに些細なことでも包み隠さず言ったほうがいい」という態度でいるほうがよいかと考えます。このために、最初に専門家が持つ能力ではなく、私が人間として信頼できるかどうかを審査するようにお願いします。

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