経営者向け「孫子」入門(14) 基本が大事です。

20121124_042019087_iOS 孫子軍形篇第四の中に、「勝者之戦民也、若決積水於千仭之谿者、形也」という文が出てきます。読み下し文では「勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭の谿に決するが若くなるは、形なり。」となります。不敗の態勢をとり、次に敵に勝つチャンスを逃さない体制を事前に作り上げるからといいます。

孫子を読もうとすることですから、兵法の話になるということになりますが、不敗の態勢をとり敵に勝つチャンスを考える要素は、「地域の戦略戦術的な価値判断、戦場に投入するべき戦力判断、兵力量の算定、彼我の相対戦力の比較検討、勝利の可能性判断」の5種類となります。この中で地域の戦略戦術的価値判だけ例示を試みます。今は使われているかはわかりませんが、昔GISが注目されたころ、マクドナルドの出店場所を決定するためにMacGISを使って参考にしたといいます。このMacGISはマクドナルドが外食産業日本一の売り上げを誇ったときの有力なツールといいます。交通状況、競合店の分布状況、周辺事情などから入店者数を予測するシステムです。MacGISが全部ではないとは思いますが、地域の戦略戦術な価値判断はいったんビジネスを開始すると不変ということはありませんから、常に評価することが必要となります。その証拠に今のマクドナルドがMacGISに従って建てた店をスクラップしています。

兵法にもありますが、事業システムの優劣にも「顧客にとってより大きな価値をもたらす事業システムの有効性、同じ価値を提供するためにより効率がよいかとする効率性、競合相手にとって模倣の困難性が大きいか、システムがより長期間持続するかという持続可能性、将来の発展可能性をどの程度持っているか」の5つが述べられています。多分に孫子が記載されている軍事上の検討要素と特定のものはありますが経営戦略論に於ける考慮するべき要素数が同じです。

不敗の態勢をとるには初めに事業が顧客に価値をもたらせるのに有効性があるかどうかを検討する必要があります。実はISO9001の評価軸も「品質マネジメントシステム」が有効に機能するかを評価するものでそのシステムが効率的であるということを最初に評価することはありません。これは効果的である以前に無効なシステムを使っても評価しようがないということであるからでしょう。

あるシステムを構築することによって事業を開始するにあたり、オリジナリティーを持って顧客を提供することが重要ですが、オリジナリティーを持って進める理由は競争に巻き込まれにくいことを意図するものです。そのための評価軸は何かといえば、基本に立ち返り、孫子の5つの要素を参考にとは直接的には使えることはできなくて読み替える必要が、『事業システム戦略論』はそのままでも使えます。といいながらも言っていることはそう大幅に変わっていると思っていません。古典を読む理由は人類普遍の知に触れることにありますから、基本に立ち返るという意味では必要なことだと思います。

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