加護野流ー経営戦略論を紹介するにあたって

初めに、戦略論を述べるに当たり、私の見るところ戦略論には2つの流派があるように思います。2つの流派とは敵の武力殲滅を目的とするかしないかで別れると考えます。代表的な兵法書である『孫子』は戦闘を可能な限り回避し先頭に持ち込まないことを是とします。これに対して世界で一番有名な兵法書であるクラウゼヴィッツの『戦争論』は先頭を可能な限り回避しというところは同じですが敵の武力殲滅が戦争の目的であると論じます。異論はあろうかと思いますが、戦略論は大きく孫子流とクラウゼヴィッツ流の2つに分けることができると考えます。最初に取り上げるのは世界最古に敬意を表して孫子にします。

これに対して経営戦略論にはいろいろな流派があります。人によって異なりますが戦略研究学会編集の『経営戦略論の理論と実務』によりますと13流派あるそうです。経営戦略論は兵学における戦略論に最初の概念を借りましたが、独自に発展しました。発展するに当たり流派が分離しました。私はこの全部について理解しているとは到底思えませんので、最初にどの流派を選ぶかについて理由が必要となります。

私が最初に取り上げるのは加護野流『事業システム戦略』です。加護野流を取り上げる理由は正規の教育を受けて学修した唯一の戦略論だからです。私は加護野先生の教えを直接受けたのではありません。教授を受けたのは、浅野コンサルティング株式会社代表取締役にして明鏡塾塾長浅野雅史先生からです。浅野先生は脳味噌が入りきらないと申しますか、化け物と申しますか、ご自身を未帰還者と表現されています。明鏡塾の講義の中で加護野忠男神戸大学名誉教授の著作『事業システム戦略』を10本のコラムにまとめたことが加護野流の真髄にふれたと思われるためです。序章から第9章まで10章分をそれぞれ1本のコラムにしました。

まずはこのコラムの紹介から始めていきたいと思いますが、1本のコラムは1章分に相当しそれぞれA4用紙1枚でまとめています。A4用紙1枚当たり1600字を目安にしています。このため10枚で16千字となりますが、250ページからなる書物をA4用紙10枚にまとめるのはある意味暴挙であると私を指導した浅野先生もおっしゃいます。

 そこで、これらのコラムに関して各章ごとに必要と思われる補足を入れます。補足の分量はコラムと同量以上になると思います。先程も申しましたが、コラムを書くに当たり、内容は単に書物を要約したものではありません。『事業システム戦略』記載内容に関して私なり解釈を与え、あるエピソードを手掛かりに内容を理解してコラムを執筆しました。エピソードを選んだ理由や解釈の結果について補足を行うことを意図します。

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